遺言(「ゆいごん」または「いごん」)に関する新たな法改正が、今国会でなされました。その内容については本稿の「相続考8」で簡単に触れたところです。
今回は、「遺言」の歴史にも絡めて、その内容と今後についてを概観してみたいと思います。
◎我が国における「遺言」の歴史
もともと我が国では、「処分」という言葉が、相続が行われる場面において「生前処分と遺言の双方に用いる用語」だった、とされています。
その後中世になって、「処分」と「遺言」は分化し、「生前処分」が原則となり、「遺言」はその例外になりました。
それが江戸時代になると「遺言」が原則となって広く行われるようになった、とされていますが、逆に明治時代以降、「遺言」の習慣は廃れてしまったようです(有斐閣「法律学小辞典」より)。
現行法における「遺言」については、最近も法改正が行われるなど利用しやすくするための色んな工夫がなされています。
それでも、なんとなく縁遠い制度というイメージが消えません。
それは、以上のような歴史的な経緯も関係しているのかもしれませんし、現在の遺言制度の使い勝手の問題もあるように思います。
◎「遺言」制度の概要と問題
改めて、遺言についての基本を、かいつまんで説明しましょう。
遺言で出来る(遺言で定められる)ことは、相続に関してなら「相続分の指定」、
「遺産分割の方法の指定」、「包括遺贈及び特定遺贈」等であり、
「誰が相続人になるのか」は、指定できません。
小説などでは、推定相続人ではない第三者を、遺言書で相続人に指定するかのような場面がたくさんある気がしますが、それは「遺贈」(と認められなければ無効なもの)で、「相続人の指定」ではありません。
そもそも、遺言は厳格な様式が求められる要式行為であり、一番簡便な遺言の方式とされていた「自筆証書遺言」についての要件ですら、
①遺言の内容となる全文、
②日付、
③氏名(署名)
のすべてを自書(手書き)することが求められていて、
手書きが免除されているのは「財産目録」のみです(民法962条)。
自書していれば、何回かは間違うこともあるでしょうから、間違えたら、その都度署名押印をして訂正しなければならないなど、簡単に作成できるものではありません。
これ以外にも、「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」という他のやり方はあるにはあるのですが、自筆証書遺言にはない要件として、公証人のもとに出頭したり、複数の証人が必要とされたりと、さらに手間や費用がかかってしまいます。
これでは確かに普及しずらいかもしれないと私も思いますし、その普及には、もう少し手軽にかつ確実に、遺言ができる環境を整える必要があると思います。
◎今後の動き
その意味で「自筆証書遺言の保管制度」や今回の「デジタル遺言」が導入されたと思うのですが、
前者については、保管制度のメリットがまだ周知されていないように見えますし、
後者については、先の投稿で触れた以降も、まだ制度の詳細が不明なところが多く、分かっている範囲に限っても、諸課題の解消にはまだ至っていないように感じます。
私の今の印象では、「デジタル遺言」の方は専門家の介在がさらに必要な部分があって、こと利便性の向上という方向性に関して、逆行しているような気がしています。
江戸時代のように「遺言」が普及するには、単なるデジタル化(ICT化と言い換えても同じ)の視点だけでない改善なり工夫なりが必要なのかもしれません。







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