相続考14ー相続土地国庫帰属制度について

 私の知り合いで相続が発生したとき、知人がぼやいていたのを思い出します。
「俺は長男だから受け入れたんだけど、あんな土地を相続しちまったから、これからは管理費用がずっとかかってしまうよ」
 これに類する話はいろんなところで聞きます。
 もし、この「負動産」が相続における協議で問題になってしまったら被相続人さんは悲しまれるだろうな、と私は思います。

◎相続土地国庫帰属制度
 この問題は、将来的に所有者不明土地につながる可能性があるので、国としてもこの問題に対処するべく「相続土地国庫帰属制度」を整備しました。
 すなわち、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により取得した土地を(相続人側が)手放して、国庫に帰属させることを可能にする制度のことです。
 相続協議でもめる原因はたくさんありますが、この負動産問題もその一つでしょう。
 以前ここで書いた通り、 相続財産の中に「市街化調整区域内」の土地がある場合の相談は、私も何件か受けたことがあります。
 一概に調整区域内の土地に価値がないとは言えないのはもちろんですが、本当にどうしようもない土地というのは存在します。
 ただ、管理のコスト負担が嫌だからとか、そもそも管理をしたくないからとかの理由で国に引き取ってもらえるようではまずいので、いくつかの要件があります。

◎要件
 当該土地の要件は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)」(以下「法」)に定められており、概ね下記の通りです(以下は「法務省ホームページ」より引用)。

【引き取ることができない土地の要件の概要】

(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

 A 建物がある土地
 B 担保権や使用収益権が設定されている土地
 C 他人の利用が予定されている土地
 D 土壌汚染されている土地
 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

 (2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

 A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 申請には審査手数料が必要で、土地1筆当たり14,000円とのこと。
 また、これが認められると、さらに10年分の管理費用も必要になります。

◎実績と展望
 上記のような詳細な要件が定められているせいか、今年4月末現在で、申請して最終的に国への「帰属」まで行ったのは半分以下(約49%)です。
 それでも、国庫に帰属する土地は増加しているのは間違いなく、中には「活用が困難な土地」も認められているとのことです(なお、まだ審査中の土地も30%弱あります)。
 国庫に帰属したのちは、国が当該土地を売却(して元を取る)するそうですが、まだ売却された例はないそうです。
 正直なところ、「はしり」の制度の感が否めません。
 それでも、今後の利用実績によって審査の運用変更等もありえるし、認められる可能性が低いわけでもないので、相続協議を進めるオプションとして考慮に入れる分には有用かもしれません。

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