相続考15-相続の根拠 「推定相続人廃除」から考える

 相続考という投稿を続けるにあたって、意識的に避けてきたテーマがあります。それは、相続が認められるそもそもの根拠は何か? ということです。
 相続法を学んでいると、遺言・法定相続及び遺留分といった制度ととともに、相続欠格や推定相続人廃除というスキームが用意されていることを知ります。
 でも、こういった多くのメニューを用意している相続法において、その制度全体を貫く原理は一体何なのか、が分かりづらい気がしてなりませんでした。

◎統一的な原理の必要性 
 この問題意識は、以前から相続法の学会でもかなり議論されてきたことのようで、素人に近い私にはそれをなぞるだけでも大変なので、あえて触れないできたのです。
 でも、相続とは何かという根本問題をスルーして、個別の法制度の問題だけを扱うことは、民法学者でなくても気持ちが落ち着かないものなのではないでしょうか。
 原理原則にさかのぼって説明する、という法律学の基本から言っても、当然のことだと考えます。

◎推定相続人廃除
 一例として、「推定相続人廃除」(民法892条)を取り上げてみます。
 これは、
・相続人になるべき人(推定相続人)であって遺留分を有する者を対象に、
・被相続人に虐待をし、若しくは重大な侮辱を加えたり、
 または、その者に著しい非行があった場合、
被相続人は、当該推定相続人を相続人から廃除することを家庭裁判所に請求できる、というものです。
 これがなぜ認められるのかというと、被相続人と推定相続人との人的な信頼関係破壊したことに対する制裁とされています。
 
 例えば、遺言は原則として法定相続に優先しますが、遺言できる事由は制限されていますし、遺留分が遺言よりも優先されます。
 ただし、推定相続人廃除が認められれば、遺留分をも「廃除」できます。
 でも、推定相続人廃除が行われるためには、家庭裁判所に認められる必要がある。 
 
 こういった制度間の相互調整的な場面をも統一した原理で説明できるのか、これは未だになされていないように私は理解しています。
 他方、他の法制度、特に財産法分野の物権法や債権法等の世界では、ある程度の原理が提示されていて、より統一的な説明がなされているように私には思えます。

◎相続の根拠とは
 先に触れた人的な信頼関係という根拠は、それと類似したスキームである「相続欠格」の理由をも説明できるものですが、これで相続の全てを説明できる訳でありません。
 例えば「代襲相続」では、人的な信頼関係どころか面識すらない親族にまで相続権が及ぶこともあり得るからです。
 もちろん、結論的なことは私には言えませんが、相続及び相続法の根本原理とは、多分、現実の人間社会の変化を前提にした、調整あるいはバランスの積み重ねの帰結なのではないか、というのが今の私の拙い考え方です。

 なお、「相続考」として想定したテーマは、今回で一通り触れたかなと思っておりますので、これをもって、一先ずシリーズ完結としたいと存じます。

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