遺贈と死因贈与、配偶者居住権と配偶者短期居住権 -相続考11

◎遺贈と死因贈与の違い

 私自身、「遺贈」「死因贈与」の違いが分かりづらかったので、そのことを今回取り上げてみたいと思います。
 というのは、学生や実務家向けの専門書でこの辺の議論を学んでみても、当初は両者の異同がどうも理解できなかったからです。
 実際、民法554条では、死因贈与について「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を適用する」としていますからね。

 簡単に両者の違いを言うと、「遺贈」は「遺言」によってなされ、一方的な意思表示で可能(単独で行える)であるのに対し、
「死因贈与」は「契約」なので、相手方の承諾が必要である、という違いがある、ということです。
 しかし、これはあくまで形式の違いにすぎないので、相続が開始した時点で遺言書が見つかり、「遺言の中で、私が死んだら土地家屋を○にあげます」というのと、「土地家屋を○にあげるが、それは自分が死んだ時だ」、というのは、実質的にはどちらなのか、という話です。
 物の本(「家族法」窪田充見P485))によると、前者は「遺贈」で、後者は「死因贈与」なのだそうです。
 もっとも、死因贈与なら(普通)契約書があるはずで(それが見つからなかったら話は簡単ではないのではないか、と私は思いますが)、遺言(による意思表示)か契約かという違いによって一応区分できる、と理解していただければよろしいでしょう。
 判例としては、遺言者の意思の尊重によって判別する、としているようですが、結論的に言うと、その法的効果についてはほとんど差がない(その意思を取消または撤回できるかでは、相違があります)ようです。

◎配偶者居住権と配偶者短期居住権

 もう一つの分かりづらい2つの概念も、取り上げてみましょう。
 私は、配偶者居住権(民法1028条以下)という用語もいささか分かりづらいと思っていました。これに似た用語で配偶者短期居住権(同1037条以下)というのもあり、この違いがよく分からなかったわけです。
 これも簡単に違いを説明すると、前者は、土地家屋の所有者である配偶者が亡くなった後も、他方配偶者が生涯、または一定期間引き続きその家に住み続けられる権利のことで、その要件としては、
①相続が開始した時点で、その家屋に居住していたこと、
②遺贈や家庭裁判所での遺産分割により、その居住権を取得することとなったこと、です。
 後者は、原則、遺産分割が終了するまでその配偶者が居住し続けられる権利であって、これの要件は上記①です。
 具体例で言うと、通常の遺産分割協議の場で、押しが強い子の側が「お父さんの家は、僕がもらうから」で押し通そうとしてもめたときに、家庭裁判所で配偶者側がこの権利を主張することができる、というものであり、それはそれで重要な改正だったと思います (個人的な感覚では、そんなの当り前ではないか、というところではあります)。
 ただ、この制度は2018年の相続法改正で設けられたものであり、今後の判例等の動向を注視する必要はあるかもしれません。

◎今後の法改正の動向
 配偶者居住権と配偶者短期居住権は、私の学生時代になかった新たな制度であり、近年の法改正の動きには私自身も注目しています。
 加えて、先日報道された「自筆証書遺言」の新制度は、遺言の作成をさらに簡便にするものだけでなく、偽造や紛失を防ぐ手立ても整えるもので、遺言制度のさらなる普及につながるように思っています。
 私自身も、こういった状況に対応すべく、今後とも研鑽していきたいと思っています。

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