戸籍証明書の広域交付についてー相続考5

◎戸籍は本籍地に申請するもの?

 戸籍があるところを本籍地と言い、従来は、本籍地以外で戸籍を取得することはできませんでした。
 それは一つには、戸籍の原本が「和紙」であったためで、それを証明書とする場合にも、コピーしなければならなかったという事情があったのです。
 もう一つの理由は、もともと、戸籍に関する事務を担う「国」が、国民にとって一番身近な「市町村長」にその事務を行わせることで、戸籍届出を促し、かつ、その内容を迅速に反映させ、
 戸籍の目的・機能である「国民の身分関係の登録・公証」を果たさせよう、としたことだと思われます。

◎戸籍の電算化

 しかし、紙データは保存に問題があるだけでなく、戸籍に書かれている文字には「誤字・俗字」があふれ、場合によっては判読できないくらいになっていましたし、
原本をそのまま証明書とすることから、「戸籍訂正」した履歴もすべて載ったままであったことも、問題意識としてあったと考えられます。
 他方、同じく市町村が証明するべき「住民票」は、手書きから電子データに早々と移行していったのに対し、戸籍はこのままでいいのか、という議論は当然あったでしょうから、こちらも電算化していく理由になったでしょう。
 ただ、各自治体とも、戸籍のコンピュータ化にはかなりの財源が必要であって、予算措置出来たところから電算化が進んだのが実態でした。

 こうして、平成20年代にはほとんどの自治体で電算化が完了したようです。

◎戸籍副本データの利用

 戸籍原本のデータの電算化に伴い、戸籍のバックアップデータである「戸籍副本」も電子データ化され、それが管轄の法務局に蓄積されるだけでなく、東日本大震災による大規模なデータの滅失を教訓に、
「バックアップのバックアップを行う」という名目で、東西二ヶ所の施設において、全国の市町村の戸籍副本データを集約する運びとなったのです。
 このネットワークを、国民の利便性の向上にも資するよう「戸籍証明書の広域交付」に利用した、というふうに私は理解しています。

◎「広域戸籍証明書」の申請方法

 この制度により、以前なら最新の戸籍から一つずつ遡っていかざるを得なかった戸籍の収集が、身近な役所への1回だけの申請で、全て揃えることが可能になりました。
 広域戸籍の証明書を申請するには、その戸籍に搭載されている人、その直系尊属(父母・祖父母等)及び直系卑属(子・孫等)以外には申請できず、
しかも、郵送申請は出来ないことになっているため、
直接、窓口に写真付き身分証明書(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等)を持参して、出向かなければなりません。

◎広域戸籍証明書の大きなメリット

 それでも、時間や手間を大幅に省けるような制度であることは間違いありません。
 しかも、1セットになって受け取った戸籍証明書が、きちんと繋がっていて遺漏がないかどうかも、市町村の窓口で確認してくれます。
 もちろん、申請してすぐに受け取れるかというと、「相続」のようにかなりの分量になる場合などは数日待つ必要がありますが、それでも、個別に申請するのに比べれば便利なのは間違いありません。

 もう一つ気にしておくべきこととして、本籍地によっては電算データが全て副本化されていないところもあったので、そんな所が残っているようなら、その部分だけは郵送で取る必要があるかもしれません。

 一度、戸籍を揃えてしまえば、今度は「法定相続情報一覧図」にしてしまうことで、戸籍証明書は不要になります。
 この制度は、自分で相続手続きをする際に大いに役立つでしょう。是非、皆さんも利用してください。

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